多様な人材の個を活かす ~自分らしさの自由度アップが自律性を生む職場環境~ | ブログ・コラム

中小企業の経営力と業績向上を加速する アクセルコンサルティング株式会社 近畿経済産業局認定 経営革新等支援機関

〒600-8095 京都市下京区東洞院通綾小路下ル扇酒屋町289番地デ・リードビル6F

友だち追加

補助金に関するお問い合わせは、
現在お受付を休止させていただいております。

無料メールマガジン

「ゼロから」収益向上を加速する!無料メールマガジン・アクセルニュース!小さな会社の経営者のための最新情報をお届けします。

多様な人材の個を活かす ~自分らしさの自由度アップが自律性を生む職場環境~

2023.6.19

こんにちは。大山です。
最近「多様性」ということばをよく見聞きします。毎日のように話題に上がっていますね。
日本は多様性の受容において諸外国と比べて遅れていると言われてきました。日本社会は集団主義や均質性を重視する傾向があり、異質な個人や意見が受け入れられにくいとされてきました。また、勤勉で礼儀正しく、規律を重んじるといった日本人の国民性が、職場では長時間労働文化を生み、社内規則を厳密に守って真面目に働くのが良いこととされてきた考え方もあります。

ところが今、働く人の多様性を尊重しようという機運が高まっています。多くの企業経営者は、従来のような職場文化では、多様化した価値観やグローバル化に対応できないと危機感を抱いています。また、労働人口の減少や市場の縮小などの影響もあり、多様な人材や市場に目を向ける必要性も増しています。

折しも、人手不足が社会的問題となっており、最近お会いする経営者様からも採用や従業員定着のお悩みを伺うことが本当に多くなってきました。人材確保が容易ではない昨今、多様な人材を認め、働きやすい職場環境を整え、従業員一人一人が高いモチベーションを持って働けるようにすることが経営者にとっては大きな課題となっています。

東海地方を中心に展開し、地域密着で50年続く老舗スーパーマーケットは昨年11月、従業員の髪の色やネイルのルールを大きく緩和しました。これまで店員の髪は黒か自然な栗色に限定され、ネイルは透明か薄いピンクのみが許されていました。
顧客の多くは中高年層であるため、ルールの緩和には懸念の声もありましたが、若い世代の従業員からは「自分の個性を生かしながら働きたい」という要望が強くあり、会社はある条件を設けることで髪やネイルの自由化に踏み切りました。その条件とは「店で一番元気な挨拶と好印象な接客をする」ことです。

ルールの見直しをきっかけに髪を金色に染めたあるスタッフは、目立つ髪色だからこそより丁寧な接客を心がけ、目元を明るく笑顔で接し、柔らかい会話をするよう努力しています。高齢のお客様に対しては笑顔で話しかけて袋詰めの手助けまで優しくサポートしています。自身がより地元に密着した店舗の一員となることを願っており、買い物客からも「この子は感じがいい」「ここに来るのが楽しみ」「金髪はおしゃれで素敵」と好印象だそうです。
従業員満足度(ES)の向上が顧客満足度(CS)の向上につながっている良い例といえますね。

名古屋市にあるテーマパークでは、身だしなみのルールを「すべて従業員の判断に一任する」ことにしました。その結果、赤色の髪、あごひげ、個性的な色合いのネイル、ピアスなど、より自由なスタイルで接客ができるようになりました。すべて以前は厳しく制限されていました。ルール変更によって、髪を好きな色に染められるようになったスタッフは「自分らしく働けることがモチベーションになる」「少ししんどくても、自分が可愛くいられていると思えばやる気が出てくる」と話しています。
見直しのきっかけは、従業員が楽しく働ける環境づくりの一環として「多様性」を認め合うプロジェクトが始まったこと。「従業員の身だしなみの自由」と「子供の安心・安全」は本当に関係があるのか、社内で数ヶ月かけて検討し、「子供たちの安全・衛生が守られるのならば、従業員の意志や個性は尊重されるべき」との結論に至りました。
従業員自身も自由を与えられることで、自発的な行動力や自律性が育まれ、その結果、業績向上につながるというねらいもあったと思います。

もう一つ、このルール変更がもたらした大きな効果は人材確保です。他業界同様、このテーマパークでも人材確保に苦労していたところ、ルール改定から1年たって、アルバイトの応募数がかつての2倍以上になり、過去最高を更新したそうです。

総合情報サービス会社マイナビが、直近1年以内にアルバイト採用業務に携わった20~69歳の会社員1,800人を対象に行ったアンケート調査(2021年)では、アルバイトの身だしなみを自由にすることについて「悪い影響を与える」と答えた企業は約3割で、ほか約7割の企業は「良い影響を与える」「影響はない」と回答しました。
「良い影響を与えると思う」と答えた企業からは、「優秀な人材が集まる」という声や、「多様化はこれからのニーズに生かされる」など事業の成長につながるという理由があげられています。

企業による身だしなみのルール見直しは、多様性を尊重し、個性を受容するための取り組みの一環です。ただし、単に自由を与えればよいという訳ではありません。見た目で表していた従来の企業イメージに替わる、それぞれの企業らしさを明確にして、それを全従業員に浸透・共有させることが必要です。企業のイメージやブランドを守りつつ、従業員の個性を生かした活躍を促すためには、明確なビジョンや価値観の共有が必要です。
先にご紹介したスーパーの「存在意義」と「ミッション」は下記のとおり掲げられています。

身だしなみルールが緩和され、髪色やネイルなどの見た目に統一感がなくなっても、「私たちならではのスタッフレベル」を提供し「地元密着」で「挑戦と進化」を続けるという共通の価値観があれば、そこに向かって一人一人が個性を発揮することができるでしょう。

今後、人口減少がますます進んでいく社会では、多様な人材を認め、それぞれが高いパフォーマンスを発揮して仕事をすることが求められます。そのために企業経営者は様々な施策を行っていく必要があります。自社では何ができるか、「多様性」「個性」「働きやすさ」「自律性」といったキーワードで考えてみませんか?

中小企業診断士 大山 マリ子