これまで、コロナ禍での「雇用」という言葉で「働き方」について書いてきましたが、これから数回、組織や人材育成にまつわることをお伝えしていきます。
今注目の「事業再構築」、企業がビジネスモデル再構築の際には、設備を購入する資金だけでなく、事業を担うための新たなノウハウの獲得や経験が必要となります。
新たな人材投資だけでなく、現在のメンバーの新たな技術習得、それ以前の社内の事業再構築に向けた組織目標の設定なども必要となるでしょう。組織の再構築を同時にやっていくことが必須となります。新しいことに取り組む「何をやるか」はもちろんですが、働くメンバー同士が新たな事業に対して成長意欲を持って取り組めるチーム体制をつくっていくことが大切になるでしょう。組織づくりにおいて重要なことをいくつか提示します。
- 成長のマインドセット
組織が新たなビジネスモデルを再構築して成長しようというとき、組織の成長のためにはその構成の個々が成長しようという意欲があることが前提です。企業としての方向性を個々が自分事にできるように、自分の果たす役割に納得して、これまでやってきたことから新たなに取り組む意欲を高めていく組織の環境に配慮していく必要があるでしょう。
とりわけリーダー層や社歴の長い層の変化を促すために、仕事の進め方そのものを変化させ、今まで以上に社外に目を向け、新たな知識や新たな関係性をつくる行動力も求められます。
そこで必要となるのが「成長のマインドセット」です。新たな事業を、組織と自身の成長の機会ととらえて、困難なことや失敗を「学習の機会」としてとらえて、さらに挑戦の意欲を高めていけるマインドを持つことです。ちなみに、反対の言葉は「固定型マインドセット」や「停滞型マインドセット」です。つい「変えられない」「○○のせいで」「才能やし」と思考停止のマインドセットになってしまうことです。
成長のマインドセットには、経営者とリーダー層のメンバーへの任せ方や仕事の割り当て方、そして何より目標設定が大きく影響します。社歴や年齢やその人本来の持つ性質よりも、組織の環境が大切となりますので、新たなビジネスモデルで大切にしてほしい価値観を都度都度伝えていくこと、そして個への成長支援をしっかりとしていくこと、少し今までよりも高い目標設定をし、失敗を恐れず挑戦できる安心安全な組織づくりが求められます。その組織づくりが事業の成功に直結すると考えます。
(参考)【成長型マインドセットについて】(弊社セミナー資料より)
- リスキリング
インバウンド業界から国内市場を対象としたサービス業へ、出向で全くの異業種へといったように、今まで以上に業態業界を超えた人的資源の移動が起こっています。「やっぱり時代はDX化だ!」とIT人材を新たに雇用するということは難しく、今働いているメンバーの新たな学び直しや技術習得が前提となります。製造ラインのスタッフがソフトウェアエンジニアになる必要も出てくるかもしれません。ロボットを導入すれば、手で組み立てる仕事をしていた職人がロボットのシステムエラーに対応できるようになれば、仕事の役割や価値が変化します。年齢や経験を問わず、組織的に取り組んでいくことがビジネスモデル再構築において大切なこととなるでしょう。当然、高齢な社員も、中途採用の方もいて、働き手の多様化も進む中、個々の能力が違いハードルもありますが、そんな時こそ社内に学び合う成長マインドが組織的に育っているとスキルを身に着けるスピードも速くなるはずです。
私たち自身が思考構造の中に、当然にデジタル技術、オンラインやクラウドなど取り入れていることが必須となっており、その分野の学び直し、再教育が必要です。そのような職業能力の再開発を「リスキリング」という言葉で表しています。デジタル技術によって、企画の立て方、製品の作り方、売り方、デリバリーの仕方、金銭の授受の仕方、原料の調達や在庫の管理まで、ありとあらゆる事業での方法が変化しています。その方法を理解し選択することが必要です。デジタルについてのみでなく新たな業種業態への適応もスピードが求められます。リスキリングにおいても必要となってくるマインドが前述の「成長のマインドセット」であり、それが個々人ではなく組織に存在していることです。
【補足:リカレントとリスキリング】
リカレント教育とは、1973年にOECDが提唱したもので「再教育」「回帰教育」近いのが「生涯学習」の考え方。リカレント教育は、特に数年前の「ライフシフト」が認知されてきた頃から再び広がっていた言葉でした。さらに、このコロナ禍で、オンラインの学びの場が充実したことから企業発信と言うよりも、個々がキャリアを意識し、身近な課題解決につながる学びをしようという潮流も見られます。対して、「リスキリング」は企業発信で、職業能力をつけること、とりわけ現在のデジタル技術への対応人材を育てること、新しい事業に向けた人的資源を育成の必要性が言われるようになり頻繁に使われるようになりました。