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合言葉「困ったときは大騒ぎ」~経営者の仕事は“仲間づくり”~

2023.2.21

本日の京都市内、雪が降ったりやんだりしています。今朝は弊社オフィス隣の小学校のグラウンドにも積もり始めていました。先月の雪の日には、子どもたちは喜んで雪合戦。通り道にはこんな雪だるまも出現していました。

雪景色は大人の私たちも風情を感じるものではありますが、物流には多大な影響を及ぼすので、特に運送業界の方々は雪の予報に気が気ではないと思います。雪道で何時間も立ち往生した大型トラックやトレーラーのドライバーさんの様子をニュースで見ると、24時間365日私たちの生活を支えてくださっている大変なお仕事だなとあらためて感じます。

大阪の高槻市に本社のある株式会社宮田運輸さんもそんな私たちの生活には欠かせない物流を担う会社の一つで、食品や生産資材をメインとした配送や倉庫管理などを手掛けておられます。先日、その宮田運輸の宮田社長の講演をお聞きする機会に恵まれました。同社は、従業員をとことん信じる「心の経営」をモットーとし、その経営手法は国内のみならず、海外の経営者からも注目されており、毎年多くの企業が視察に訪れています。

宮田運輸には「困ったときは大騒ぎ」という合言葉があるそうです。社内では「宮田の仲間」という管理職クラスが参加しているLINEグループがあり、日常のあらゆる出来事が共有されていて、何か困ったことが起きたら「困っている!」と大騒ぎするそうです。
・悪天候で高速道路が使えず、配送センターの荷物が動かない!
・接触事故を起こした車両が出て、車も荷物もダメになってしまった!
・事務所のサーバーがダウンして、配車手続きがうまくいかない!
こんなメッセージが流れてくると、社長を含め全員が打開策を考え、現場の判断で次々と解決に向かって動くそうです。「人手が足りない!」なら空いている仲間がいち早く現場に駆けつける、「トラックが足りない!」には余裕のある事業所が車両を回し、「搬入が重なって倉庫のスペースに不安がある!」という配送センターがあれば、空きのある倉庫に仮卸をして翌日運ぶといった対応。トップダウンではなく、ボトムアップで対処していく。困っている仲間がいるなら応援に駆けつけよう!と、事業所間、個人間の垣根を越えて助け合うという土壌が社内にはできていて、さらに、こういった対応事例、エピソードを「宮田の仲間」で流して共有すると、現場での「ありがとう」がみんなからの「ありがとう」に変わっていき、また別のトラブルが発生したとき、仲間同士が自発的に助け合えるようになっていくそうです。

「上から下への一方通行の働きかけで、働く人たちが主体性を持って動き出すことはありません」と宮田社長。「ああせえ、こうせえ」と指示するのではなく、「困っている」「助けてほしい」と言ってしまう。それを当たり前にすることで、全員が同じ問題に取り組む仲間だという意識が広がっていくのだとおっしゃっています。
過去のブログでも何度かお伝えしているキーワード「心理的安全性」が非常に高い組織(チーム)になっているのですね。心理的安全性が低い組織(チーム)では、助けを求めることは自分の無能さをさらけ出す行為であり、周りの信頼を損ねるのではないかといった心配も生じて、助けを求めることに歯止めがかかります。ミスや失敗が許されず自己責任ばかり追及されてしまう組織(チーム)でも「助けてほしい」とは言いづらいでしょう。

「誰かの役に立ちたい」「人助けのできる自分でありたい」「仲間と一緒に何かを成し遂げたい」こういう想いを人は誰でも持っていると経営者や現場のリーダーは信じて、一人一人がその想いに気づく場をつくり、気づいたことを発揮できる環境をつくっていく、会社がそういう場になるよう心がけて動いていくのが経営者の仕事であり、それはマネジメント(=管理)ではなく「仲間づくり」のようなものだと宮田社長は言われています。
ですが、宮田社長も最初からこのような考え方だったわけではなく、数値目標を掲げて社員を追い込んでいた時期もあったということで、紆余曲折、多くの失敗から社長自身が学び、現在に至ったそうです。

大事なのは強制したり、押しつけあったりするよりも助け合うような関係性をつくっていくこと。このような土壌をつくり、組織文化、社風にしていくことは一朝一夕にはできません。まずは小さな一歩から。「困ったときは大騒ぎ」を合言葉にしてみませんか?

中小企業診断士 大山 マリ子
(参考文献:『社長の仕事は社員を信じること。それだけ。』宮田博文著)