阪本です。
最近、縁あって家で蚕を育て始めました。桑の葉を食べてどんどん大きくなり繭をつくっていく神秘に魅了されている最近です。
そんなこともあって「紡ぐ」という言葉の尊さを感じつつ今回のブログを書いています。
前回関係性がすべてということも伝えました。
私はこれまで、「組織づくり」や「人が辞めない会社」について継続的に発信してきました。今回はその延長として、「事業承継」をテーマに、私の考えや取り組みをお伝えします。
4月から、京都府事業承継・引継ぎ支援センターでも仕事をさせていただいています。私自身も日頃お手伝いする企業や、このブログで紹介した会社の多くが、2代目・3代目の経営者であることに改めて気づきました。創業者が現役であっても、ご家族がすでに会社で働いていたり、将来的に家族に継いでもらいたいと考えていたりするケースも多く見られます。
■ 事業承継はスタート地点
「事業承継」と聞くと、株式譲渡や代表権の移転など、形式的な手続きに目が行きがちです。しかし実際には、「承継してからが本番」なのです。
経営者が変わるというのは、企業にとって大きな転換点。特に後継者が家族や身近な従業員の場合、互いに「わかっているはず」との思い込みが、逆にコミュニケーションの摩擦を生むことがあります。
そこで重要になるのが、PMI(Post Merger Integration)の考え方です。これは単なるM&A後の手法ではなく、中小企業の事業承継においても、「経営の引き継ぎ」と「組織文化・信頼の引き継ぎ」をセットで考えるべきだと感じています。
■ 「理念への共感」から始まる新たなチームづくり
これまでにご紹介した宮田運輸さん、木村石鹸さん、井上株式会社さんなども、承継をきっかけに組織のリ・デザインを実践され、「人が辞めない会社」「関係性の良い職場」へと進化しています。
彼らの共通点は、先代から受け継いだ理念を単に継承するだけでなく、自分自身で再解釈し、それを社員と共有しなおすことで、共感を生み出している点にあります。
「理念は引き継ぐが、方法は変える」 「社員と一緒に新しい未来をつくる」
この姿勢が、社員一人ひとりに当事者意識を芽生えさせ、新しい風を組織に吹き込んでいます。
■ 「戻りたい会社」「話したくなる職場」の条件
以前、井上株式会社さんのブログ「ハッピースパイラルな世界をつくる経営」でも書きましたが、本当に魅力的な会社には「関係性の質の高さ」という共通点があります。
・役職ではなく名前で呼び合う ・カムバック制度があり、出戻り社員を歓迎する ・立候補制で新しい挑戦を促す
こうした制度や文化も、最初から存在したわけではなく、承継後の経営者が社員とともに考え、丁寧に積み上げてきた結果なのです。
ハッピーマネジメントとPMI、一見異なるものに見えますが、実はどちらも「人」と「関係性」を大切にしている点で共通しています。
だからこそ、承継は新たな「ハッピーな組織づくり」のチャンスとも言えます。
また、組織内での言葉遣いも重要です。先日お会いしたある社長は、「従業員」という言葉を避け、雇用形態に関わらずすべての人を「メンバー」と呼ぶとお話されていました。言葉一つにも、経営者の意識や会社の姿勢が表れるものだと感じます。
■ 引き継いでつながっていくには、一緒に走り出すことが大切
繋いでいくことは、「バトンを渡す」以上に、「一緒に新しいステージを創り出す」プロセスだと思います。
経営者として自分らしさを発揮し、社員との対話や信頼関係を深め、組織をしなやかにしていく。その先に、持続可能な組織の未来が見えてきます。
私自身も支援者として、経営者や組織がその一歩を踏み出す際に伴走できる存在でありたいと考えています。
経営者にしかできない組織づくりもあれば、従業員と一緒でなければ到達できない未来もあります。どのようなステージにある企業であっても、皆さんとともに組織の未来を築いていくお手伝いができれば幸いです。
(参考過去ブログ)
宮田運輸さん https://accelc.co.jp/blog/soshikiteam3/
https://accelc.co.jp/blog/tuzukushakai/
木村石鹸さん https://accelc.co.jp/blog/jieigata2/
中小企業診断士 阪本純子