阪本です。特に学びの世界で『ハイブリッド教育』という言葉も使われるようになり、大学や高校でのオンライン+学校で学ぶ「ハイブリッド型授業」も広がり、学びの多様性が広がっています。これって企業でも共通するのではないでしょうか。
浸透してきたあらゆる場所や場面での「ハイブリッド」。その中でも働く場としての「ハイブリッドワーク」での、リーダーシップのあり方について考えてみます。
以前に書いたブログも2年近く前の記事ですが、今でも読んでいただいているようで、読まれていない方はこちらも合わせてお目通しいただけると嬉しいです!
https://accelc.co.jp/blog/withcsoshiki/
コロナ禍をきっかけにして、もともと制度として持っていた大企業やなんとなく仕方なしにやっていた小規模企業の方も(もちろんコロナ前から積極的にリモートワークを当たり前に整えていた事業者さんもいますが)、リモートワーク、テレワークが当たり前に定着してきました。テレワークとオフィス出社を併用するような「ハイブリッドワーク」が常態化してきました。
完全テレワークよりもハイブリッドワークを求める人の方が多いという調査結果があります。(ご参考に・・・)
https://slack.com/intl/ja-jp/blog/news/leveling-the-playing-field-in-the-new-hybrid-workplace
- 現在ナレッジワーカーの過半数(58%)がハイブリッドワークを行っているほか、3 分の 2 が自分の希望する働き方としてハイブリッドモデルを挙げています。
- すべての従業員体験指標において、ハイブリッドワークとリモートワークの従業員によるスコアがオフィス勤務者のスコアを上回りました。完全オフィス勤務者にとっては、ワークライフバランスと仕事関連のストレスが大きい課題であることも判明しています。
- 経営層、白人のナレッジワーカー、男性、子供のいない人ではオフィス勤務を選ぶ割合が高いことから、今後の職場では近接性バイアスによって既存の不公平が定着するリスクが高まっています。
ハイブリッドワークでリーダーシップが高まる
ハブリッドワークは、会社からのルールではなく、状況に応じてテレワークかオフィスワークを使い分ける働き方であり、本人の意志による多様な働き方です。社員の自律性に任せた働き方となるので、主体的に働くことが出来るようになります。一方、それぞれが自分の状況を開示しないと抱え込んでしまうことになります。管理職の立場にとっては、部下を信用しきれない、生産性が下がったような気がして、気になって仕方がない、空席が目立つ全員が揃わない机の島での自分の位置が揺らいでいるようで、なんだかフラット化している景色に居心地の悪さを感じているかもしれません。従業員の立場では、自分から報告とか相談しないと、経過を知ってもらう機会がなく、ますます自己責任でしかなくなります。成果でしか見られなくなると、本当に会社って必要?と思い始める従業員も出てきてしまい、定着率に影響が出る可能性もあります。
だったら、どうしたらいいでしょう?管理職の立場も従業員の立場であっても、すぐに相談できる、リーダーだからって部下に、普段から相談できないような関係性であったらうまくいきませんよね。主体性というより、ちょっとハードルを越える積極性も必要です。事務所にいるから、オンラインだからってそれぞれの遠慮をなくすこと、その一歩が主体性につながるのではないでしょうか?それぞれがリーダーシップが発揮できるチャンスともなります。
人は関わることで、主体的になる場が増えていく
よく経営者や管理職の方から「もっと主体性を持ってもらいたい」とお聞きします。そもそも主体性は持ってもらうものでなくって、自然と生まれてくるもの。人は関わること、情報を知ること、そして背景が分かることで課題意識を持ち、主体性が生まれてモチベーションも高まります。近接する対面の場であったような従来の「空気を読む」ということが出来にくくなるので、現実的な声がけ(多くの場合は、最近は文字によるチャットツールですよね)と、声がけがしやすい仕組みづくりがリーダーには求められます。打ち合わせで細かいニュアンスを伝えたいときは対面の人もオンラインの人もすぐに話せる環境をつくっておく、そのためにそれぞれのスケジュールや状態を把握できるような仕組みがあれば、ハードルが下がりそうな気がします。非同期コミュニケーションだからこそ意識する丁寧な表現やリアクションも必要となってきます。
ハイブリッドワークでも支援型リーダー
心理的な安心安全な場をつくることがハイブリッドワークにおいても大切です。ある企業は、オンラインもオフィスの人も毎日、短時間話す時間をつくっている、特にない時は5分で終わるし、何かある時は別途打ち合わせ時間をその場で設定することを行っているそうです。別の企業は、朝の挨拶とタスクを毎日チャットで、リモートの人もオフィス勤務の人も同じように全員に送る。またある会社は、ハイブリッドワーク体制になる前は、一応決めていても抜けてしまっていた1on1の実施を、コロナ禍で毎月1回事前にスケジュール化してやるようになったそう。最近は、日報でなく分報という方法をやっている事例も聞きました。
このように、テレワークのルールというより、コミュニケーションがやりやすくなる環境づくりをする能力がリーダーには求められるようになりました。その能力をつける人こそ、部下の支援ができるリーダー(例えば、サーバントリーダーシップ)となるのではないでしょうか?
ハイブリッドワークやテレワーク、たとえ対面で通常業務の会社であっても、ソーシャルディスタンス、パーテーションで物理的な距離が離れ、情報の入りにくさが、加速されています。マスクの影響で表情が見えない、感染リスク回避のための輪番制での出勤、ランチの默食などで、圧倒的にコミュニケーションの量は減っています。
物理的に近いことから発生しやすい会話、意図していない雑談からのアイデアなどにも、価値はあります。対面の場は必要だし、私も好きです。三密があるからこそ生まれるアイデアがあります。一方で、「三密から『三散』」の時代へ」( 作家・五木寛之氏)の言葉もでてきました。「拡散」「分散」「逃散」という表現のように、会社組織の在り方も、組織内外を含んで、分散や拡散を意識しつつ組織戦略を考えていく必要があると思います。さらに、組織を構成する「人」は資源ではなく「資本」という考え方が浸透してきています。そんなことも次回はお伝えしますね。
中小企業診断士 阪本純子