働き方改革 | ブログ・コラム

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カテゴリ:働き方改革

研修を通して考えた「生産性の上がる職場で大切なこと」

2026.1.14

阪本です。

先日、改めて最近の研修やエンゲージメント調査で気になっていることがありました。それは、「関係性の質って、どの程度がいいのだろう?」ということです。

持ち味研修を実施いただいている企業では、毎回12問のエンゲージメント調査をお願いしています。その中にある問いの一つが「職場に何でも話せる親友(同僚)がいる」というもの。このスコアが低い企業も少なくありません。

でも「親友」である必要って、本当にあるのだろうか?きっと中には、「仕事は仕事」と割り切りたい人もいるはずです。

関係性の“深さ”はどこまで必要か?

「なんでも話せる親友がいるか?」という設問は、一見プライベートすぎるように思えます。しかし、Gallup社が提唱するエンゲージメント調査の中では、この問いが意外にも生産性や離職率と関係していることが示されています。とはいえ、「誰かと深く関わること」を必須とするのではなく、心地よい関係性の“選択肢”があるかが大事なのではないか、と最近は考えるようになりました。

そんな時に、年明けの研修で出会ったのが、エドガー・シャインが提唱する「関係性の4段階」です。職場における人間関係は、以下のように段階的に整理されます。

この中で先ほどの問いは③〜④を想定していると言われます。でも、誰もが④を求めているわけではありません。③の「パーソナル関係」に至るだけでも、十分に信頼や安心感のある職場がつくれるのです。逆に④になると身内過ぎて甘えが増えて、口論になりがちということもあるようです。

選択肢があることが大切

研修中に「私は職場では深く関わらなくていいと思ってる。仕事がきちんとできればいい。生活のために働いているんやし」という声も聞きました。

この価値観もまた、尊重されるべきものです。
関係性は“深めること”より、“選べること”の方が大事だと私は考えます。誰かと雑談したい人もいれば、静かに自分のペースで働きたい人もいる。その両方がお互いに尊重される空気があること、それこそが「関係性の質が高い職場」になりそうだなとも思います。

生産性を上げるために必要なのは「安心感」

人は、関係性が深いから行動できるのではなく、安心感があるから行動できるのです。「こんなこと言っても大丈夫かな?」と思った時に声をかけられる、調子が悪そうな同僚に「大丈夫?」と自然に聞ける失敗したときに「自分が悪いんじゃないか」と必要以上に怯えなくてすむ。そうした適度な人とのつながりが、個々のパフォーマンスを引き出し、チームとしての力につながっていくのじゃないでしょうか。

持ち味研修を通じて感じるのは、「関係性の質は、急には変わらない。でも、意識すると確実に変わっていく」ということです。関係性の4段階を参考にしながら、持ち味のカードワークも進めると自己理解を通して「今の職場はどの段階が多いかな?」「自分はどんな関わり方をしたいんだろう?」と問い直してみることもできます。

導入を検討されたい企業さま、随時ご相談ください。

中小企業診断士 阪本純子

持ち味カードを使ったキャリアデザイン研修のススメ

2025.12.1

阪本です。

今日は、長年お世話になっている「持ち味カード」を活用したキャリアデザイン研修の実施報告と、そのおすすめポイントをご紹介します。

この「持ち味カード」、顧問先の企業さまでは導入して5年目になります。主任クラスや若手社員が新入社員研修で頻繁に活用し、昨年からは面談に使用する「自己申告表(成長支援シート)」にも組み込まれています。今では社内だけで自走して活用されていて、外部支援者としてとても頼もしく感じています。


 全社員対象の「キャリアデザイン研修」90分ショート版を実施

今回は、全社員の皆さんを対象に「持ち味カード」を用いたキャリアデザイン研修を、昨年に続いて実施しました。昨年より短時間の90分バージョン。講義は最小限にし、ほぼワーク中心のプログラムです。

研修ではまず、社長より「経営理念・会社方針とよりよい人生」について、心のこもったメッセージをいただきました(この時間が本当に大切…!)。

そこからはキャリアの基本を軽く押さえ、「Will・Can・Must」のフレームを応用しながら、持ち味カードを使って

  • CAN(できること)の棚卸し

  • WILL(やりたいこと)の抽出

グループでの対話・相互理解
を進めていきました。

 “覚えていない”からこそ、キャリアを考える機会が必要

研修冒頭で「去年の研修を覚えている方は?」と伺ったところ、手が挙がったのはごく少数。「覚えていない方?」には多くの手が……。これは決して悪いことではなく、キャリアは放っておくと後回しになるという人の自然な傾向だと思います。だからこそ、この時期の研修はとても有効です。まもなく賞与面談がある、年末に向けて一年の振り返りをする時期、来年の目標を考え始めるタイミングといったこうした節目に、勤務時間中に、仲間と一緒に人生と仕事を語る時間は何より貴重です。そして、私の経験からも、定着率の良い会社ほど、人生に役立つ教育に時間を使っていると強く感じています。直接スキルに関係しなくても、会社が「社員の人生を応援する」姿勢を持つことが、経営理念の実践にもつながります。

多世代・他部署を混ぜたグループだからこそ生まれる学び

今回のグループは、あえて部署も年代もバラバラに。18歳〜81歳まで幅広い年齢層の社員さんが集う会社だからこそ、擬似的な多世代交流のような効果も生まれました。普段は仕事の話しかしていない相手と、人生や価値観について語る。若手に対して、つい先輩が“お節介”を焼く。みんなで「CAN」「WILL」について自由にコメントし合う。そんな場が和気あいあいと生まれ、90分とは思えない濃密な時間になりました。

講師として心がけたこと 〜ほぼ“タイムキーパー”〜

私が担ったのは、キャリアの基礎理論を少しお伝えすることと、時間にメリハリをつけて「集中して内省する場」をつくること。短時間でも深く考えられるように、自己完結しない・仲間と関わる構造にこだわりました。研修というと“強制参加”の印象がつきまといますが、そんな中でも必ず、次の成長ステップに前向きに活かしてくださる方がいます。そして、モチベーションが低めの方も巻き込みながら、優しいファシリテーションで場を整えるのが私の役割です。いい会社は、やっぱり教育に時間をかけている。そして、その投資は必ず社員の働きがいにつながる。
今回改めてそう感じました。

最後に:年末年始は、キャリアの棚卸しに最適な時期

最後は少し宣伝のようになってしまいますが……
年末年始のタイミングで、「仕事と人生の目標・アクションプラン」を見直してみませんか?忙しい毎日の中で忘れがちな“自分の声”を取り戻す機会として、キャリアデザインはとても有効です。

持ち味カードを使った研修は、自己理解、他者理解、認め合う組織によるチームワークを同時に高められる、非常に汎用性の高いプログラムです。

導入を検討されたい企業さま、随時ご相談ください。

中小企業診断士 阪本純子

「静かな退職」を防ぐ、経営者にしかできないこと

2025.9.26

阪本です。

先日、「来月末で退職することになりました」と突然の告白を受けました。ベンチャーで働く30代半ばの方で、自由な雰囲気の中で裁量を持って活き活きと働いているように見えていたので、驚き半分、「やはり来る時が来たのか」という感覚もありました。この感覚、この瞬間、過去の職場でも既視感あるなあと思いつつ。

思い返すと、1年前には休日返上で新規事業の提案書を作り、「役員プレゼンがあって」と活き活きされていました。けれどもその後、「最近は決裁が降りるまでが長くて正直疲れる」「このまま頑張っても給与は変わらない気がする」と口にしていたことを思い出します。そのときはよくある愚痴だと思って聞き流してしまったのですが、それが退職を決断する心のプロセスだったのかもしれません。ご本人は次へのキャリアアップにむかってを前向きに歩み出していますが、組織づくりに関わる立場としては「もっとできることがあったのでは」と胸がざわつきます。

「静かな退職」という現象

退職そのものは一人の人生の再スタートですが、企業にとっては大きな損失です。人生を会社に縛られることはいいとは限らないしステージを変えていくことも必要な場合もあり、よりよい人生を送れることであれば良いのですが、なんだかもったいないなという現象として最近特に気になっているのが「心の退職」「静かな退職」という言葉。
実際には辞めてはいないのに、意欲や熱意を失い、「どうせ努力しても報われない」と感じてしまう。

努力しても報われないと感じると、熱意は薄れ、本業の仕事は「やりすごすもの」になっていきます。会議室では笑顔でも、心の中ではスイッチを切っている社員がいるかもしれません。これは組織にとって目に見えにくい深刻な損失です。

一度「静かな退職」モードに入ると、後から立て直すのは難しいものです。
だからこそ、「頑張っても評価されない」「報われない」という状況をつくらないことが大切です。そのために必要なのは、古典的ですがやはりコミュニケーションです。1on1ミーティング、エンゲージメント調査などを通じて、メンバーの不満や心境の変化を早期にキャッチし、ずれを修正していくこと。これは経営者や上司にしかできない役割です。

AI時代のやりがい

近年、AIに聞けば大抵の答えが返ってきます。便利である反面、「自分の仕事の意味」を見失いやすくもなりました。私たちのような仕事もより一層そうです。自分自身の体験を振り返っても、認められて自己有用感が高まればより頑張れます。人は、必要とされ、認められて初めて力を発揮できます。取引先や仲間に「あなたがいて良かった」と思われる実感こそがモチベーションを支えます。AI時代だからこそ、人との関わりの中で役割や存在価値を感じられる場づくりが一層重要になっているのだと思います。成長に本当に価値があるのかという疑問も生まれる中、自己の成長よりも、社会での有用感、関係性の質を高めていくことが人生を豊かにしていくものだと感じています。

会社や組織は人生を豊かにする道具

社員に「モーレツ社員」であることを求める時代はとっくの昔に終わりました。会社は人生を犠牲にしてまで尽くす場ではなく、一人ひとりが「ここで働いていて良かった」と思えるための道具であるべきです。人生の生活時間の中で、仕事の占める割合は高いので、やはりそこが意味ある場、幸せを感じる場でないともったいないです。

実際に、「自分の力が役に立っている」「この場で必要とされている」と感じられると、人は自然にエネルギーを注ぎます。逆に、どれだけ頑張っても評価されない、方向性が見えないとなると、静かに心が離れていきます。そうなれば、表面上は在籍していても、すでに“心の退職”に足を踏み入れているのです。

評価制度や福利厚生を整えるだけでは十分ではありません。日常の中で「自分はこの組織の一員として意味がある」と社員が実感できる仕組みや声かけがあってこそ、組織に活気が生まれます。そのような環境では自然と新しい価値や成果も生まれていくのです。

私たちがご支援している組織づくりや研修も、その一つの手段です。
経営者にしかできない「心の退職を防ぐ仕組みづくり」、そして社員が「ここで働いていて良かった」と思える組織文化を一緒に育てていきませんか。

中小企業診断士 阪本純子

組織の土壌づくりが紡ぐしなやかな経営

2025.8.11

阪本です。

近所で通っているシェア畑も4年目に入りました。農業委員も2期目に今年度から入り4年目、食育活動に加えて農業についても少しずつ学んでいます。組織の土壌づくりということを以前からお伝えはしていましたが、本物の土壌づくりをしていく中で、やはり畑も組織も土壌が大切ということを身をもって体感しています。8月からは、秋冬の作付けに入る前の土壌づくりが始まる時期です。

そして今、その土壌づくりを後押しする心強い道具がAIです。ChatGPT5もリリースされましたね。生成AIを使って、農業でいう土壌診断や生育予測のように、見えにくい状態を可視化し、改善の方向を示してくれます。

今年はトマトはだめできゅうりの方が育ちが良く。 追肥のタイミングと水やりが要因のようです

有機肥料のような遅効性の取り組み

畑では堆肥やぼかしといわれる有機物から作った有機肥料を使っています。化学肥料のような即効性はありませんが、遅効性でより改善効果があるようです。土の中でじっくりと分解され、微生物を育て、時間をかけて土を肥やします。組織でも同じように、目先の数字を動かす即効策だけでなく、理念の共有や日々の小さな承認、感謝の習慣といった遅効性の取り組みが、長期的に組織を強くします。

習慣というのは強い意志がないと続きません。形骸化しているように見えても実は組織を強くしていることがあると思います。朝礼を半年続けてみる、毎年の経営方針発表を従業員参加型で毎年継続する、早寝早起きのような習慣づけで土壌を改善し、いつの間にか離職率が下がり、豊かな関係性が育まれていくはずです。

 

AI活用ヒント

社員アンケートや面談記録をGeminiやChatGPTに入力し、『この組織の強みは?』『摩擦が生まれやすいポイントは?』と尋ねてみましょう。

※必ず個人情報や機密部分は削除・匿名化してください。法人向けの有料契約(ChatGPT Enterprise や Google Workspace Geminiなど)を利用するか、公開しても差し支えない情報だけを入力すること

が安全です。

 

水やりと間引きのバランス

最近の高温や水不足で、調整が難しかったです。畑では、水の与えすぎも不足も害になります。芽が混み合えば、間引きも必要ですがついつい躊躇してしまいます。組織でも、過干渉も放置も人の成長を妨げます。適度な関わりと役割の見直しが、健全な成長につながります。手をかけてあげるのと同時に。観察することと原因を探ることが大切です。

 

AI活用ヒント

日報や業務記録をAIに読み込ませ、『負荷が偏っている部署や人は誰か?』『この人の得意分野は?』と聞くと、役割調整のヒントが得られます。

※この際も個人が特定できる氏名や顧客情報は必ず削除してから入力してください。

 

理念があっても成果が出ない理由

理念は掲げただけでは機能しません。ホームページに載せ、朝礼で唱和しても、日々の意思決定や評価の基準に反映されなければ、現場では「理念は理念、現場は現場」と受け取られます。

以前から、経営者と従業員、そして関係する社内外の仲間と共につくるということが大切だということをお伝えはしています。ただ、経営者は「責任をとる」という役割があります。従業員の要望を聞くこと、現場の困りごとをきちんと聴くことは大切ですが、社員側には理念に沿って「責任を果たす」という役割があります。理念でフィルタリングせずに全てを受け入れると、方向性が散漫になり、資源が分散し、成果は上がりません。

理念を基準に意識決定をすること、理念をもとに優先順位をつけること、理念を行動や評価の基準に落とし込むこと、この3つがなければせっかくの土壌も収穫まで到達できませんよね。

収穫と次の種まき

肥料切れの合図は観察から 土壌改善が必要なので有機肥料を施肥します

畑では、収穫はゴールではなく次の準備の始まり。振り返りながら片づけつつ、次の土壌づくりに入らないといけません。意外に休憩の期間がないものです。経営も同じで、成果を振り返り、学びを次に活かすことが重要です。まさにPDCAサイクルを回すことでより良い成果を目指すイメージです。

AI活用ヒント

売上や顧客データをAIに渡し、『過去3年間の成長要因と、来期に伸ばすべき領域は?』と聞くと、季節や市場サイクルも踏まえた提案が得られます。

※顧客名や取引先名などの固有情報は削除してから入力してください。

 

畑も組織も、成果を生むには見えない“土壌”が命です。有機肥料のように時間をかけた取り組みと、AIによる可視化を組み合わせ、理念を軸に意思決定を重ねること。これは、経営者にしかできない仕事です。

経営者一人では気づけない景色も、経営層としてリーダーを育てることと合わせて、生成AIも日々の壁打ち相手として加えてみれば、より広く、深く見渡すことができます。小さな企業でも、「耕し、対話し、可視化する」ことで、しなやかで持続可能な組織を育てていきましょう。

※ただし、GPT5になってから人間味が減ったという投稿もあるように、ほかのAIも併用していくと良いかと思います。そのうち、hpやこういったブログも参照されなくなり、すべてAIアプリで解決してしまうと・・と私たちの仕事ももっと変化させなきゃいけないし、広告もHPの役割もまた変わってきそうなのですがね。そのあたりのAIとの共存についてもキャッチアップしていきましょう。

中小企業診断士 阪本純子

AIに頼りつつも5Sを見直してみよう

2025.6.25

費用の3/4は助成金を活用し、これからの時代に必須の生成AI・RPAの知識をお得に学べる研修はこちら↓

阪本です。

今回は古典的なテーマを取り上げてみます。

なぜ今、5Sを見直す必要があるのか?

先日、中小企業の経営者層向けに京都府の補助金に関わる生産性向上セミナーを数回開催しました。5s・3S・カイゼンの視点から生産性向上を図る取り組みをしていこうという補助金です。5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は多くの企業で導入済みのはずですが、形だけになって効果を生んでいないケースも少なくありません。実際、「うちでは5Sはやっているつもりだけど……」という声も多く聞かれました。では “基本” と言われる5Sが、なぜ今、京都府の補助金のテーマにもなっているのか、やはり労働力不足の中、より生産性を上げようと思った時の基本となることを見直すことが意図されています。補助金は事業者に気づいてほしい行政からの意図があってのものです。

最近の補助金では、より効率化できる働き方のための環境整備に、それによる生産性向上と給料の上昇が目指されています。

セミナーでの気づき~5Sはやっている“つもり”?~

 

5Sの基本と誤解~それは単なる清掃活動ではない~

こうした気づきを受けて、セミナーでは改めて5Sの基本に立ち返りました。5Sとは整理(必要なものと不要なものを分け、不要物を捨てる)、整頓(使うものを誰もがすぐ取れる所に置く)、清掃(職場や設備を常に清潔に保ち異常を見つける)、清潔(3Sを維持して標準化する)、(決めたルールを守る習慣付け)という5つの柱からなる活動です。よく「5S=掃除」と思われがちですが、それは大きな誤解であり、5Sは単なる美化活動ではなく、職場全体の効率と安全性を高めるために不要なものを取り除き、必要なものを誰もが使いやすいよう整えるための仕組みとして取り組むものです。現場が忙しいとつい後回しにされがちな清掃も、「単に掃除すればOK」ではなく、清掃しながら機械の不具合に気づく、ホコリの蓄積を防いで故障を未然に防ぐ、といった 職場の改善活動 として捉えることが重要です。さらに「躾(しつけ)」まで含めて推進することで、決められたことを守る企業文化の醸成や人材育成にもつながっていきます。そこにチーム制を取り入れることでみんなで取り組むという意識がチームワークの醸成になります。

 

何より、5Sを正しく実践すれば作業時間の短縮やヒューマンエラー削減、転倒事故の防止、コスト削減といった多くのメリットが得られて職場の安全衛生意識も高まるんです。つまり5Sは現場をキレイにすること自体が目的ではなく、働きやすい環境づくりを通じて業務改善や安全管理に直結する基盤づくりなのだと再認識する時間となりました。

セミナーでは参加者同士でチェックリストを使って現場の状況を振り返りました。「5Sはやっているつもりだったが、見直すと抜けが多い」――例えば、倉庫の奥にはいつの間にか不要な在庫品が残ったままになっていたり、作業場の通路に一時的に置いた荷物が常態化して動線を邪魔していたりと、5Sが徹底できていない実例が次々とあります。「普段から整理整頓しているつもりでも、動線や物の配置についても、「よく考えたら無駄な動きが多い配置になっていた」など多くの現場で「5Sの基本」が意外と徹底できていない現状を見直す時間となりました。

【事例】

工具や備品の定位置管理 – 工具や治具、一つひとつに「ここに戻す」という指定位置を決め、ラベルやマークで表示します。ある製造業では、この定置管理によって「無い物が一目でわかる」状態を作り、工具探しの時間を大幅に削減することに成功しました。使ったものを所定の場所に戻すルールを徹底することで、探し物に費やすムダな時間が消え、生産性向上に直結します。

 

作業動線の見直し – 現場のレイアウトや人の動きをマップに書き出し、ムダな移動がないか検証します。先ほどの企業では、作業位置(レイアウト)を見直すことで 移動時間のムダを削減できた部署もあったそうです。頻繁に使う道具や部品は作業者の近くに置く、重い材料はなるべく移動距離を短くする位置に配置するなど、「最短・最速で仕事ができる動線」を意識したレイアウト変更がポイントです。

 

見える化の工夫 – 5Sの現場では「誰が見ても分かる」状態づくりが大切です。例えば床にテープで境界線を引いて材料置き場や通路を明示し、決められた場所以外に物が置かれていれば一目で気づけるようにします。工具棚にシルエット(型紙)を貼り、工具が欠けていればすぐ判別できるようにする会社もあります。こうした 目で見て分かる仕掛け によって、現場全員が整理整頓を維持しやすくなり、「あれがない」「どこに片付けた?」という無駄を防止できます。小さな工夫ですが、積み重ねることで大きな効率化につながります。

 

これらの他にも「5S掲示板」でビフォーアフターの写真を共有して改善意識を高める、5Sチェックリストをデジタル化して改善点を記録・分析する等、各社が創意工夫を凝らしています。大切なのは、自社の現場に合った工夫を見つけ、継続することです。

協力隊時代に事務所掲示用に作った英語バージョン

協力隊時代に事務所掲示用に作った英語バージョン

まとめ~現場改善の出発点を経営者が率先垂範する~

セミナーを通じて改めて感じたのは、5Sこそ現場改善の出発点だという原点的な事実です。どんな最新技術を導入しようとも、職場が整理整頓されていなければ本当の生産性向上は望めません。言い換えれば、5Sが徹底されて初めて問題点やムダが可視化され、さらなる改善活動(カイゼン)につながります。だからこそ、今こそ経営者自らが5Sに率先して取り組み、その 「本質的な価値」を現場に伝えること が求められます。5Sは古くて地味な取り組みに思えるかもしれませんが、必ず現場力の向上と会社全体の生産性アップにつながることを気づいていただけました。「整理・整頓・清掃・清潔・躾」――今一度この原点に立ち返る、私自身も仕事だけでなく、身の回りも気にしてみようと思います。


 

中小企業診断士 阪本純子