とにかく暑いこの夏。普通に仕事をして家に帰るだけの一日の活動でも体力を奪われるような気がします。体にはこたえますが、それでも、4年ぶりの祇園祭完全開催、4年ぶりの天神祭船渡御、4年ぶりの花火大会、4年ぶりの甲子園全校入場行進などなど、世の中「4年ぶりの○○」が多く、否が応でも気分は盛り上がりますね。
お盆休みに帰省で地元に帰ってくる旧友と久しぶりの再会というのもこの夏は多いかもしれません。私も、今年はそんな企画がいくつかあるので、忙しくなりそうですが楽しみです。その参加率の高いこと!みんなコロナ自粛の反動でしょうか。予定されているどの集まりも、声掛けしたメンバーの約9割が参加です。普段、SNSなどオンラインでつながってはいても、やっぱり会いたい!という感じでしょうか。
つい先日、その第一弾があり、行ってきました。久しぶりの再会に思わず握手やハグ!そして、だれもが言ったのが「やっぱりリアルがええよなぁ~」
コロナ禍でのリモートワークの経験談が話題にのぼりました。オンラインでのビジネス交渉、特に相手が外国人の場合は難易度が高く、直接会えばどうにかコミュニケーションできるものの、オンラインではまるで無理だったとか、オンライン飲み会をやってはみたものの、盛り上がらず失敗だったとか。リモート飲み会もやり方によっては楽しくできるそうですが、少なくとも私の周囲では成功例が少なく、こうして「やっぱりリアルよなー」とか言っているのは昭和世代だから?と思わなくもないですが、とにかくやっぱりリアルがいいと、それは私も同感です。
どうしてリアルがいいのでしょう?
それは、ノンバーバル(=非言語)コミュニケーションが影響しているためだと考えられます。ノンバーバルコミュニケーションとは、表情や顔色、ジェスチャー、姿勢、目線など非言語的な手段で情報を伝えるコミュニケーションの一形態です。人間は日常のコミュニケーションにおいて、言葉だけでなくノンバーバルな要素も積極的に利用していて、その影響は大きいとされています。
心理学者のアルバート・メラビアンによって提唱された「メラビアンの法則」は、コミュニケーションにおいて言語情報(会話そのものの内容)が7%、聴覚情報(声の大きさや話すスピードなど)が38%、視覚情報(表情や視線など見た目や仕草)が55%の割合で相手に影響を与えるというもので「7-38-55のルール」や「3Vの法則」とも呼ばれています。
メラビアンの実験結果では、話している内容と声のトーンや表情が一致しない場合、人は表情を優先して受け取る傾向にあります。たとえば
・笑いながら叱る ⇒ あまり本気で怒っていないという印象を受ける
・不機嫌そうに御礼を言う ⇒ 心からの感謝ではなく不満があると受け取られる
このことから、コミュニケーションを取る際、話し手の意図を正確に伝えるには、言語情報・聴覚情報・視覚情報という3つの情報を一致させる必要があるということがわかります。
たとえば、接客や取引先との交渉や会議でのプレゼンでは、どんなに魅力的な内容でも、最初から最後まで淡々とした調子で話すと聞き手はつまらなく感じたり、熱意が伝わらなかったりするかもしれません。話の内容に応じて声に抑揚をつけたりジェスチャーを取り入れたりして変化をつけると、相手の興味をひきつけ、自信や魅力を効果的にアピールすることができます。
上司や同僚と会話をするときも、相手の表情やジェスチャーなどの非言語的なサインをより注意深く観察することで相手の感情や意図を読み取り、適切な反応を示すことで、より円滑なコミュニケーションが実現します。リーダーであればチームに対して自信と信頼を持って接し、リーダーシップを発揮するためのノンバーバルコミュニケーションを意識的に行うことが大切です。TPOを意識した身だしなみを心がけたり、明るい口調や笑顔で人に接したりすることもメラビアンの法則を取り入れたコミュニケーションスキルです。
オンラインではカメラ越しの表情やジェスチャーが制限され、声のニュアンスも伝わりにくくなり、その結果、参加者同士のリアクションが鈍くなって会話がもたついてしまうことがあります。メラビアンの法則を活かしきれない環境だといえます。
ようやく徐々にリアルが戻ってきた日常。ビジネスの場でも友人や家族とのコミュニケーションの場でもノンバーバルを意識してみませんか?相手に好印象を抱かれて、予想以上のメリットが期待できるかもしれません。
中小企業診断士 大山 マリ子